Vision Pro でみるMVの新しい形、ザ・ウィークエンド : Open Hearts
Vision Pro で Apple TV を開くと、通常のビデオコンテンツのほかに Apple Immersive と分類されたコンテンツ群がある。
さすがに Apple Immersive を見たことがない Vision Pro ユーザーはいないと思うが、一通り見てそのあと見なくなってしまった人は結構いるのではないかと思う。しかし、その間に Apple Immersive ビデオは少しずつではあるが増えていっている。
一通り Apple Immersive ビデオは体験したよっていう人も10月に公開された「沈没へのカウントダウン」は見たことがないという人もいるかもしれない。
この短編映画は将来 Apple Immersive Video を振り返った時にきっと歴史的な作品として位置付けられるものに違いないが、個人的には自分の身体性と画面の動きがあまりマッチしない印象だった。シーンが切り替わるというのは許容できるのだが、スライダーによる移動がどうしても違和感があって、あまり 3D 酔いしない僕もちょっと気分が悪くなった。しかし臨場感という意味ではこれまでの 3D ビデオに比べれば格段に高い解像度であり、今後のこの分野の映画の発展が期待されるものであった。
というところへ出てきたのがザ・ウィークエンドの Apple Immersive Video である。
Music Video という意味ではこのザ・ウィークエンドの MV は記念碑的な作品になるに違いないと思う。きっと最初に Vision Pro で MV を流したかったアーティストはたくさんいたに違いない。もしデビッド・ボウイが生きていたらきっと MV を作っていただろう。
映像の流れなどは前情報なしで見てほしいので触れないが、このムービーにおいてもスライダーによる演出がふんだんに使われている。こっち側の慣れがもっと必要なのかもしれないが、なかなかに辛みがある。じわじわと等速で勝手に移動するというのが、単に自分との相性が悪いのかどうかは今後出てくる作品を見ていって問い直したい。
ちなみに、音楽系だと最初期のコンテンツはアリシア・キーズのスタジオライブだが、こっちは定点カメラによる撮影だったので、カメラが切り替わったとしてもすごく見やすかった。
さて、この MV 、結構体験としては結構斬新だ。昔から MTV を見てきた自分としては、MV はのめり込んで見るというよりは、ながら見のような関係がずっと続いてきたのだが、Immersive Video として流されると、ながら見のような他人事的な関係ではなくなり、MV の中で起きていることが予想以上に自分と関わりを持つかのように感じられた。
例えば今回は医療系のシーンが多いが、通常の MV を見てもこんなに不安を感じたり、自分との関係性を感じたりすることはない。だからこそ数分の動画なのに見終わると疲れてしまうわけだが。MTV とかは半日とか見ていても疲れないが、もし将来 Immersive Video の MTV みたいなものが始まったら、半日も見たらきっとぐったりしてしまうに違いない。
Apple Immersive Video としての快不快みたいな文法はきっとありそうだ。ビデオコンテンツを作ろうというわけではないが、UI のデザインにおいてこの感覚は活かしていこうと思う。